経済指標の不思議

 政府が発表する経済指標によると、日本はいざなぎ景気を遥かに超える長期間に渡って好景気を続けていることになっています。バブル崩壊以降、政府が協調する指標は実質成長率ですが、高度成長期に政府が協調していたのは名目成長率です。GDP国内総生産)には名目GDPと実質GDPがあります。
 たとえば、2005年を基準として、日本経済が
2005年 携帯電話1万円/台で10台売れたとすると、名目GDP:10万円、実質GDP:10万円
2006年 携帯電話1万円/台で12台売れたとすると、名目GDP:12万円、実質GDP:12万円、名目成長率:20%、実質成長率:20%
 しかし、
2006年 携帯電話1.2万円/台で10台売れたとすると、名目GDP:12万円、実質GDP:10万円、名目成長率:20%、実質成長率:0%(物価が上昇しただけで、販売台数は変化なし)
2006年 携帯電話0.8万円/台で10台売れたとすると、名目GDP:8万円、実質GDP:10万円、名目成長率:-20%、実質成長率:0%(物価が下落しただけで、販売台数は変化なし)
となります。つまり、実質成長率が同じ0%でも、名目成長率が-20%と+20%の違いが出ました。
1980〜1990年 名目GDP<実質GDPかつ名目成長率>実質成長率
1991〜1993年 名目GDP>実質GDPかつ名目成長率>実質成長率
1994〜1996年 名目GDP>実質GDPかつ名目成長率<実質成長率
1997〜1997年 名目GDP>実質GDPかつ名目成長率>実質成長率
1998〜1998年 名目GDP>実質GDPかつ名目成長率=実質成長率
1999〜1999年 名目GDP>実質GDPかつ名目成長率<実質成長率
2000〜2007年 名目GDP<実質GDPかつ名目成長率<実質成長率
 以上のことから、どうも少なくとも「名目成長率>実質成長率かつ名目・実質ともにプラス成長」がデフレ脱却のシグナルであり、好景気とはこの状態が3年以上持続した状態であるのではないかと思うのです。そういう意味では、バブル崩壊以降「名目成長率>実質成長率」となったのは、1997年の1年間のみ、その後1998〜1999年は名目・実質ともにマイナス成長、2001〜2003年は名目がマイナス成長、1998〜現在まで常に「名目成長率<実質成長率」という状況です。これで、デフレを脱却し、いざなぎ景気を超える好景気が続いていると言えるのでしょうか。そんなに好景気が続いているのに、国・地方の借金は増え続けているのですから、おかしな話です。政府は一方ではいざなぎ景気を超える好景気をアピールし、一方ではかつてない財政難をアピールする、理解不能の日本経済です。そして、一般国民は、好景気の実感どころか、社会保障・税金の負担増と給料の下落という狭間で、政府の好景気アピールを冷ややかな眼差しで見つめる以外になす術もないのです。